コミックマーケット104(C104)参加者の皆様お疲れさまでした。6年ぶりくらいにここに記事書きます。
久しぶりなので自己紹介
私は同人作家です。コミケには毎回出展しています。副業(?)としてプログラマーと大学講師をやっています。なので、出展ジャンルは「同人ソフト(213)」で、主に「技術書」に分類される同人誌を作ってます。そして、このブログの過去記事を見てもらえばわかるように、作るものは本のみならず、(プログラマーなので)プログラムはもちろんのこと、売り方含めて作っています。
「売り方を作る?」……と、疑問に思う方は「分割金利手数料はジャパネットが負担」を想像してください。売り方を作るというのは、例えばああいうことです。作品というのは商品本体のみに非ず。売り方を含めて作品だと私は思っています。
さて本題(購入者が値段を決める本を作った話)
今回の夏コミ(C104)では、売り方に作品性を持たせた作品(同人誌)を売ってきました*1。その同人誌の名は「先生、わかりません!(1.3版)」。
能登半島地震がきっかけ
この同人誌は、石川県地域の大学・専門学校向けに開講しているUNIXプログラミング(シェルスクリプト)の授業が元ネタです。学部問わず履修者を募っているため初歩的なミスや質問が多く発生するのですが、中・上級者からすると「なるほど、そんなところで躓くのか!」という意外な気づきを与えてくれます。それが大変興味深く、また彼ら入門者にとってみても躓きポイントが網羅された内容になる、ということで、2022年に同人誌化したものです。内容は、下記の紹介ページ
をご覧ください。
この本は久々によく売れました。平行して授業も毎年実施していますので、何度か内容を追記しながら改訂してきました。そして迎えた2024年、ご存じのとおり能登半島地震が発生しました。その影響は担当している授業にも及び、履修者の中にも欠席者が出ました。また、先生方や研究スタッフの方からも過酷な状況が伝えられ、被害の重大さ痛感しました。
部外者の私が今できる一番効果的なことといったら資金援助かなと思いました。東日本大震災で被災した親族の話を思い返してみてもそう思えました。そこで思いついたのが石川にゆかりのあるこの同人誌のチャリティー頒布企画でした。
作品性を持たせた頒布方法
よく売れた本とはいえ新刊ではないので、今となっては作品性が薄いことは否めません。作品性が薄いということはあまり売れないということなので、被災地支援という当初の目的には効果が薄いということになります。そこで、売り方に作品性を持たせてこの弱点を補おうと考えたのです。
ここで作り出した売り方の作品性は次の三つです。
- 全額寄附とした
- 購入者が価格を決められる(募金もそうだから)
- 0円でもいい
三番目の「0円でもいい」というルールを不思議に思うかもしれません。このようにした理由は、「お金を被災地域に届けることが目的であって、そのためにうちのサークルを経由する必要性が無いから」です。例えば、ふるさと納税で被災自治体に寄附をすれば、寄附した人は所得控除を受けられて一石二鳥になります。
どれくらいの効果があったのか?(売上レポート)
通常であれば、作品性を持たせるのは「自己表現のため」でしょうが、今回は被災地支援としてお金を送ることが目的ですので、自己表現で終わっては意味がありません。つまり、作品性を持たせたことによってより多くのお金が送られなければ意味がありません。ということで、売上レポートを発表します。
原価(印刷代)を下回っては意味がない!
よく、街頭募金で立っている人に対して「募金の呼びかけで時間を浪費してないで、同じ時間アルバイトして自分のバイト代を募金に充てろ!」と言う人がいますが、その理屈で言うなら、「(価格の決定権を購入者に与えたせいで)印刷代を下回らせるリスクを負うくらいなら、そのまま印刷代を寄附しろ!」と、私も叱咤されることになります。なので、まずは印刷代を上回ったかどうかを報告します。
印刷部数と印刷代
今回、チャリティー仕様に改訂して注文する部数は100としました。これまで何度か改訂・増刷してきたので、これくらいが限界だろうと見積もりました。そして、瑕疵分の予備も含めて106部納品され、幸いなことに不良品は0でした。
これに対する印刷代は27,440円でした。印刷業者の閑散期を狙ったり、文章を削ってページを減らすなどの努力をして比較的安く抑えられたように思います。
結果、一冊当たりの原価は約259円でした。
初売りからC104までの総売上と寄附金倍率(暫定)
チャリティー仕様の「先生、わかりません!」は、おかげさまでC104終了時点で残り5冊になりました。イベント主催者に対する見本誌提出によって3冊消費したため、ここまで正味98冊売れたことになります(納品106冊-提出3冊-残5冊)が、101冊なくなったことに代わりはないため、101冊売れたものと見なすことにします。
そして、現時点での総売上は94,650円です。ということは、投じた原価(印刷代)はおよそ3.4倍になって返ってきたことになります。まだ残り5部ありますし、それに0円で購入した方はどこかで寄附しているはずなので実質的な寄附金倍率はもう少し高いと思います。参考までに、なくなった部数で割れば単価が出ます。計算してみると、現時点での本書に対して購入者が与えた価格の平均は966円でした。
まずは、投じた資金が無駄にならずに済んでよかったです。被災地支援としてみればこの金額は微々たるものであることはわかりますが、チャリティー活動の方法論として他の方の参考になれば幸いです。
購入価格の分布(C104の場合)
頒布価格を購入者に任せると、一体どんな価格をどのくらい人が付けるのか気になりますよね?これに関しては、今回の夏コミについてだけ、知ることができました。
コミケ以外の即売会イベントではこれまで、専用の募金箱を用意して、他の本とは別に集金していました。購入者一人一人がいくら出したのかの記録は付けていなかったので、単に合計額がわかるだけでした。しかしコミケでは、来場者数が多いことに警戒して、専用の募金箱を使うのを避けました。他の本との合計額で払われた場合に、お金を崩して募金箱に入れるオペレーションで注文を捌ききれなくことを恐れたためです。その代わりに、購入者がこの本の分として払った(or 払うといった)金額を付箋にすばやくメモし、それを専用募金箱に放り込んで後で数えることにしたためです。
といことで、夏コミ(C104)における購入価格をグラフ化したものをお見せします。
夏コミでは44人の来訪者に購入していただけましたが、一番多かった値付けは1000円、次いで500円でした。この値付けは単品買いの場合によくなされ、キリのよい金額ということで多かったのだろうと思われます。
一方、他の本とまとめ買いする方は、他の本に対するお釣りの額や、そのお釣りに+1000円、+500円というのが主なパターンでした。例えば、200〜400円の価格帯のところの多くは700円の本を買ったお釣りである300円でしたし、1400〜1600円の価格帯のところはすべて500円の本を買ったお釣りに1000円を上乗せしてくださったというパターンでした。
また、単品買いでは、2000円、2500円、3000円、5000円などの高額購入された方もいました。「趣旨に賛同したのでこれくらい出します。役立つことを願ってます」と、おっしゃる方もいました。本当にありがとうございます。
ところで、反対に0円で購入する方は今回まったく現れませんでした。私としては0円でも構わない理由をしっかり説明したつもりですし、それで実際に納得してくれた方は多かったと感じています。しかし、その趣旨を理解した上で、「どうしても責任を感じてしまう」などと話して、結局0円で持っていく方はいませんでした。中には、「これの原価はいくらですか?それ以下だとやっぱり申し訳ない」と話す方もいました。そのようにして、来訪者からの正直な気持ちを伝えられると納得します。私が買う側だったとしたら、やっぱり0円で持っていくのは勇気がいるなぁと思いました。なお、C104以外でも、0円で購入された方は記憶している限り、一人しかいませんでした。
改めまして、お買い上げいただいた皆様に、心より感謝申し上げます。なお、お預かりしたお金は、年内(石川県の義援金の締め切りまで)に責任をもって石川県に送ります。
最後に、通販用の商品ページを貼っておきます
売り方に作品性を持たせた話を強調しましたが、本の内容も面白いと思うんです。なので興味があったら皆さんも是非お買い求めください。寄附をしながら。
なんと、ここはブログなのに「カゴに入れる」ボタンが設置できちゃうんですねぇ。そう、私はプログラマーでもあるので、こういうシステム開発に対しても作品性を持たせたがるのです。(ただ、サードパーティーCookieをオンにしてもらわないとボタンが効かないのですが……。ボタンが押せない方は、本店ページで是非)
寄附したい額だけ「寄附チケット」をカゴに入れてご購入ください
以下、商品をカゴに入れるボタンがありますが商品自体の価格設定は0円です。その代わり、寄付チケットもありますので、これを是非一緒にカゴに入れながらお買い上げください。もちろん、他所で寄附する方(した方)は0円でも構いませんよ。
以下、商品ページ
*1:正確には「頒布」ですけど。